日本七宝作家協会

第55回 日本七宝作家協会国際展(公募) 選評
内閣総理大臣賞  
大園 恵実
Osono Megumi
《 景色を運ぶ 》
審査委員 樋田 豊郎
(美術史家)
蝶々も「擬態」するのだという。その目的は、天敵に捕食されないためで、味の悪い蝶の振りをするそうである。大園恵実はそんな蝶の擬態に着目した。ただし、擬態の目的は置き換えた。蝶は身を守るためではなく、あちこち飛び回ってきた結果、世界各地の風景と同化してしまったというフィクションをつくりあげたのだ。蝶のようにときには大洋をも越えて飛翔する昆虫の翅には、異郷の景色がよく似合う。技術の巧みさ第一主義の工芸分野に、観客は倦んでいる。大園はそんな古き伝統を壊してくれるかもしれない。
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文部科学大臣賞  
Beate Gegenwart
Beate Gegenwart
《 HIDDEN WORDS1,2 》
審査委員 長谷川 淑子
(七宝作家)
美しいフォルムのボールは鉄をベースにしたほうろう七宝です。 金、銀、銅の素地に釉薬を焼け付けるものを七宝といい、鉄に釉薬を焼け付けると琺瑯と分類されますが、もともと歴史の出発点は同じものとして紀元前3000年頃エジプトで発生しました。 この作品は微粉砕の黒釉薬をコンプレッサーで拭き付け焼成した後、白釉薬を同じく拭き付け極細の針で搔き割って繊細な模様をつけています。 ところどころマスキングやステンシルを使って描いた黒や赤のドットがアクセントとしておしゃれなボールになっています。 鉛ガラス釉薬をつかっていないこのような軽くて手触りの良いほうろう七宝の器は食卓を楽しくしてくれます。
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造幣局理事長賞  
平田 英夫
Hirata Hideo
《 眠りへの誘い・・・Ⅲ 》
審査委員 押元一敏
(東京藝術大学 准教授)
この度、初めて審査に参加させていただきました。七宝はとても繊細さを要する技術ですが、その一方で多くが大胆さを内に秘めており、個性になっていたと思います。私は、七宝に関する専門知識は疎いのですが、自身の専門である装飾、デザインや絵画性の観点から拝見して、強く興味を受けたのが平田さんの作品「眠りへの誘い・・・Ⅲ」でした。作者が夢想のフィルムのようなコマ送り画像と示すように連続性を持つ16枚の画面で構成された平面作品です。曲線の揺らぎと円のリズムが心地よく、分割してもそれぞれのシーンとして観ることが可能でもあり、全体としてもバランスよくまとまっています。作品の世界観に惹かれたことはもちろん、全体と部分、繊細さと大胆さに通ずる静と動といった対犠性を備えていることが高く評価できます。
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東京都知事賞  
郭 宜瑄
Kuo Ihsuan
《 A Beautiful Thing 》
審査委員  桂 盛仁
(重要無形文化財「彫金」保持者)
優しさが漂う温かい表現が目に入った!!
3点で1つの物語になっているのが分かる。
                                出会い、付き合い、結ばれる
鳩は平和の象徴、擬人化は恋人表現に最上の題材。 淡い色調も表現方法にプラスとなり、見る人に希望を持たせ 微笑ましく心暖まる 優美な作品になっている。
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審査員特別賞  
Seungju Lee
Seungju Lee
《 Korean traditional landscape 》
審査委員  白幡 明
(公益社団法人 日本工芸会諸工芸 前部会長)
タイトルから「韓国の伝統的な風景」となるだろうか、その景色を有線で表現した蓋物である。 墨絵をフッと思い起こさせる、その表現は白と黒の世界ではなく、 七宝の持つ色釉薬で優しく現わされている。 3点組で、径は同じ高さが異なる組み合わせ、1枚の絵を3分割した様に見える。 蓋物の構造が、我々が始めて見る造りになっている。 何か使用目的があるのだろうか。 気になるのは、面取りをもっとする必要がある。 使うと云う前提を考えると危険であろう。
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審査員特別賞  
木原 名代
Kihara Nayo
《 めぐみの樹 》
審査委員  白幡 明
(公益社団法人 日本工芸会諸工芸 前部会長)
大作である。画面の2/3が大樹で埋まり 画面構成に圧倒される。 それは、大、中、小のパーツから成り立ち、 そのひとつひとつが「めぐみ」となる様だ。 又、そのパーツには模様が動き回る、緻密な計算とダイナミックが共存した作品となっている。
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